2015年 09月 12日
ロンドン・ウォレス・コレクションの名画たち
皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか?
今回の投稿は、7月に行って参りましたイギリス旅行の最後の訪問地
ロンドンで、かねてより訪れたかった美術館「ウォレス・コレクション」の
名画についてです。
私はバラや庭園巡りの後に、バラに関する美術も学びたいと思い、
必ず美術館へ行くことにしています。
今回訪れた「ウォレス・コレクション」は、地下鉄ボンドストリート駅から
徒歩約5分の場所にありました。

こちらの美術館は、第四代ハートフォード侯爵リチャード・シーモア=
コンウェイ(1800~1870年)が世界中から収集した美術品を、
侯爵の息子リチャード・ウォレス氏(1818~1890年)が受け継ぎ、
ウォレス氏のタウンハウスであったここ「ハートフォードハウス」の中に
美術品を飾り、ウォレス氏亡き後、ウォレス氏の未亡人が、
美術コレクションの全てをイギリス政府に寄付し、現在ウォレス・コレクション
として一般公開されています。{年中無休(但し12/24~26休館)、
10:00~17:00 入場料無料、写真撮影フラッシュ無しなら可。}
こちらが、リチャード・ウォレス氏

元は貴族のロンドンでのタウンハウスであった為、美術品が家具や
カーテン等と共に、自然なかたちで配置され、
「貴族の暮らしの中での美術」を感じさせてくれました。
素晴らし過ぎる質と量でした。

入り口を入ると、見事な階段のエントランスホールがあり、
階段を上がっていくと、フランシス・ブーシェ(1703~1770年)の
「日の出」(1753年)と「日の入り」(1752年)の
大きな絵が目の前に現れました。
「日の出」

「日の入り」

このフランシス・ブーシェという画家は、ロココを代表する
フランスの画家であり、優美な画風が、女性好みの絵として有名です。
そして、2階の「Small Drawing Room」へと進み、

「Large Drawing Room」を更に進み

その先の「Oval Drawing Room」にたどり着くと、

今回のお目当てのひとつ、「Madame de Pompadour」
(ポンパドール夫人)(1759年)の肖像画がありました。

こちらもブーシェの作品で、彼がこの作品を描いた頃は、
宮廷画家であり、1745年にルイ15世の公妾となった
ポンパドール夫人の美術の先生をしていた頃です。
当然、パトロンはポンパドール夫人とあって、
ブーシェが描くポンパドール夫人の肖像画は、
ポンパドール夫人自らの自己プロデュース、プロパガンダ性が
現れています。ブーシェ以外のお気に入りの画家にも、もちろん
そのように描いてもらっていたわけですから、ポンパドール夫人は
今でいう、セルフマネージメントに優れた女性であったのかもしれません。
それにしても、この絵の中のポンパドール夫人は、本当に美しいのです。
他の様々な美術館で、彼女の肖像画を見てきましたが、こちらの彼女は、
ひときわ美しいと思いました。
豪華なフリルに美しいレース刺繍、胸元のリボンに一輪のバラの花、
まさに「ローブ・ア・ラ・フランセーズ」のドレスに身を包んだ彼女は、
優しく正面を向き、その頬は胸元のバラと同じバラ色です。
背景には、オレンジの木やバラ、愛犬のコッカースパニエルが描かれ、
母性を表す母子の石像のようなものも描かれています。暗い背景は、
彼女を引き立たせ、彼女の存在を明るく誇示しているかのようです。
また、手には絵筆を持って、美術や芸術との関わりを示し、画全体から、
まるで美術や芸術の庇護者であることを表しているようです。
そして、このポンパドール夫人の肖像画とちょうど反対側にあるのが、
日本でも最近有名になった絵「The Swing」(ブランコ)(1767年)です。

描いた画家は、フランス盛期ロココ美術を代表する画家、ジャン・
オノレ・フラゴナール(1732~1806年)、ブーシェに師事し、
優美で動きのある絵を得意としました。当時、ヴェルサイユの
格式張った窮屈な宮廷文化から解放された貴族たちと、
富裕層の一部の市民との交流が見られるようになった時代背景の下、
奇想な美術が展開していくことになりました。
フラゴナールは自身の絵の登場人物にそれぞれ明解な役割を
与えています。こちらの「ブランコ」では、ブランコに乗る若い女性、
女性を見て喜ぶ若い男性、それを見て喜ぶブランコを押す年老いた
男性です。ついつい個性的な登場人物に目を奪われがちですが、
周囲の植物や光が、美しく繊細に描かれていました。
バラが描かれた絵を探しながら、館内を回っていると「Dining Room」
という、以前は本当にここで食事を楽しんだというダイニングルームの
壁にこちらの絵が飾られていました。

「Dogs with Flowers and Dead Game」(1715年)フランスの
動物画を得意とするアレクサンドル・フランソワ・デポルト
(1661~1743年)の絵です。
バラの絵をみつけた!と喜んだのも束の間、怖い絵に
目をそむけてしまいそうになりました。
狩猟犬が、狩りを終えた後のシーンの絵ですが、
両脇には、ケシの花とバラの花が描かれています。
一見美しい花たちですが、ケシの花は「戦いによる血や死」、
バラの花はトゲがある事などから「苦難」「苦悩」の意味が
隠されています。中央の百獣の王、ライオンの彫像は、
こちら(人間)を睨んでいます。こんな絵を見ながら、食事が喉を
通らないですが、命を頂く有り難さを認識なさい、という、メッセージを
読み取ることが出来ました。
「Great Gallery」

この他にも、ヴァン・ダイクやハルス、レンブラントといった素晴らしい
画家たちの絵画を始め、美術品がたくさんありました。
にも関わらず、館内は静寂に満ち、しかも身近に鑑賞することが出来ました。
こちらの美術品は、全て門外不出とのこと、貸出はなく、ここに実際に
行かないと見ることが出来ないそうです。
中庭には、自然光が射し込む明るいティールームがありました。

そのティールームでは、日本の南部鉄器の鉄瓶が使用されていました。

世界中から一級品が収集された美術館で、メイド・イン・ジャパンの
物が使用されていることにとても誇りを感じました。
イギリスだということを忘れるほど、こちらの美術品は、フランスのものが
多いように思いましたが、それは、収集家がどこでどんな暮らしをしていたか、
また、収集家の趣味趣向を表しているのだと思います。
皆さんも機会がありましたら、ぜひ、こちらに足をお運びになられて、
個人のコレクションとしては一級の美術品の数々を、実際に
ご覧になられてみてはいかがでしょうか。
参考文献:「Wallace Collection Guidebook」
「西洋美術史」北澤洋子監修(株・武蔵野美術大学出版局)
メールアドレス salonderoses2@excite.co.jp































